ご案内:関西パレスチナ研究会 公開シンポジウム



 関西パレスチナ研究会 公開シンポジウム

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パレスチナの危機を読む
入植者植民地主義に抵抗する歴史家ラシード・ハーリディーの著書から

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 昨年10月7日から続くイスラエルによるガザ攻撃では、数々の戦争犯罪が指摘されるも、停戦がなされず犠牲者が増え続けている。その結果、イスラエルのガザ攻撃がジェノサイドに当たる可能性が次々指摘されるという、パレスチナ問題の歴史のなかでもはじめての事態を迎えている。
 
 しかし、この事態はパレスチナで100年間かけて築かれた入植者植民地主義体制の新たな1ページとして理解する必要がある。入植者植民地主義と抵抗という紛争の構造は、いかにして生まれ、パレスチナ人の抵抗をかき立ててきたのだろうか。
 
 このシンポジウムでは、昨年12月に邦訳が出版された米国在住のパレスチナ人のオピニオンリーダーでもあるラシード・ハーリディーの著作『パレスチナ戦争—―入植者植民地主義と抵抗の百年史』(法政大学出版局)の訳者3人が報告し、コメンテーターの発言も交えて、同書の意義を検討していく。

日時:3月27日(水)15:00~17:30
場所:立命館大学衣笠キャンパス 
   平井嘉一郎記念図書館カンファレンスルーム
(バス停「立命館大学前」で降り、正門から入って右手すぐの建物です)
開催方法:対面・オンラインのハイブリッド形式
*オンラインの申し込みは下記のリンクからお願いします。
*対面参加の場合は申し込み不要です。直接会場にお越しください。

プログラム
15:00 主催者あいさつ
15:10 報告① 「ガザ情勢とパレスチナ人の抵抗の歴史」
    鈴木啓之氏(東京大学大学院総合文化研究科スルタン・カブース・グローバル中東研究寄付講座特任准教授)
15:30 報告② ハーリディー家とエルサレムの歴史
    山本健介氏(静岡県立大学国際関係学部講師)
15:50 報告③「100年戦争」というパラダイム
    金城美幸氏(立命館大学生存学研究所客員研究員、愛知学院大学等非常勤講師)
16:10 休憩
16:20 コメント:松野明久氏(大阪大学名誉教授)
16:35 コメント:田浪亜央江氏(広島市立大学国際学部准教授)
16:50 質疑応答
17:20 閉会の辞

主催:
関西パレスチナ研究会
科学研究費補助金基盤研究B「ポスト・オスロ合意期におけるパレスチナ人の新しいネットワークと解放構想の形成過程」

共催:
立命館大学中東・イスラーム研究センター(CMEIS)
東京大学中東地域研究センター(UTCMES)

2022年度第3回研究会報告

 

実施日時:2023324() 15:30~18:00

実施形態:オンライン


【報告①】

報告者:西道氏(京都大学大学院人間・環境学研究科研究生)

報告タイトル:Palestinians in Israel and the Future Vision Documents: Searching for a way to binationalism

報告では、2006年~07年に発表された未来構想文書(Future Vision Documents)をもとに、イスラエル国内のパレスチナ人が提示する自己認識や二民族国家の構想が紹介され、文書の登場の背景についての長期的・短期的要因の考察が行われた。短期的要因として、2000年代にイスラエルのユダヤ系市民の間で、イスラエルの政治体制や「ユダヤ的かつ民主的国家」についての内実を確定させようとする議論が加速したことが指摘された。長期的要因としては、オスロ合意の結果として孤立化したイスラエル国内のパレスチナ人の地位をパレスチナ解放闘争史およびイスラエル国内政治で位置づけなおす必要性があったことが指摘され、この時期に積極的な活動を展開したアズミー・ビシャーラらイスラエル国内のパレスチナ人の主張が整理された。その後、未来構想文書の一つ「ハイファ宣言」に焦点を当て、二民族国家に向けた展望を困難にする政治・社会的文脈やパレスチナ民族運動の衰退が分析された。

 

【報告②】

報告者:マジード・シハーデ(ダール・アル=カリマ大学)

報告タイトル:Settler colonialism in Palestine in a comparative perspective

 報告では、従来の植民地主義と入植者植民地主義の違いとして、前者が先住者の労働力の搾取を目的とした一時的な現象だった一方、後者は先住者の排除を目的として恒久的な構造として植民地に留まり続ける点が指摘された。アメリカ、オーストラリア、南アフリカ等の入植者植民地の事例と比較した際のイスラエルの特殊性として、入植事業をユダヤ教と結びつけた点や、常に支配地を拡大させてきたために国境が画定せず、憲法など政治体制の基礎を未確定のままにしている点が示された。入植者植民地主義の終結のための先行事例では、一般には南アフリカのアパルトヘイト体制の終結に言及されることが多いが、報告者は南アフリカでは白人による大部分の土地の支配が続いていることから、先住者自身による統治の確立を提起してアルジェリアの事例も参照項とする必要性も提起した。

 

議論では、戦前の日本のキリスト教シオニズムと植民政策の関係史を専門とする役重善洋氏がコメンテーターとして、日本の満州侵略の口実の一つとなった万宝山事件(1931年、中国北部の長春で朝鮮人入植活動を進め、現地の中国人農民との対立を起こし、日本警察の介入を招いた事件)をもとに、日本の入植者植民地主義の事例が紹介された。また、2000年代の未来構想文書と2021年に起きた「統一インティファーダ」との関係や、パレスチナとの他地域の被抑圧集団との交差的連帯の可能性、民主的一国家構想の内実、パレスチナ問題を語る際に用いるアパルトヘイト、民族浄化、ジェノサイドといった枠組みそれぞれが持つ政治的含意などが話題にのぼり、パレスチナの現実の理解につながる論点が幅広く示された。

(文責・金城美幸)

【ご案内】関西パレスチナ研究会2022年度第3回研究会

 

今回の研究会はベツレヘムにあるDar al-Kalima大学のマジード・シハーデ氏がパレスチナからご報告されます。シハーデ氏はパレスチナ北部アッカー近郊のカフル・ヤシーフ村出身のイスラエル国籍保持者で、現在はベツレヘム在住です。著書にはイスラエル国内のパレスチナ人コミュニティのサッカー文化に焦点を当てた研究(Not Just a Soccer Game: Colonialism and Conflict Among Palestinians in Israel. Syracuse: Syracuse University Press, 2011)があります。最近はシオニズムの土台である入植型植民地主義のアジアにおける位置づけに関心を持たれており、日本の研究者との交流を希望されています。また、西道奎さんもイスラエル国内のパレスチナ人組織の将来像についてご報告されます。ぜひご参加いただければ幸いです。


*研究会はオンライン(Zoom)・英語で開催いたします(通訳なし)。

参加は下記のリンクよりご登録をお願いいたします。
https://chukyo-u-ac-jp.zoom.us/meeting/register/tZUkdOCrqT8vE9HP7oaqHgmS5c3Kab3HtWoP

【Research Seminar by Kansai Society for Palestine Studies】

■Date & Time Fri. March 24, 3:30pm-7pm (Japan)/8:30am-12pm (Palestine)

■Program
Presentation:
(1) Magid Shihade (Vice President for Academic Affairs at Dar Al Kalima University, Bethlehem)
Settler colonialism in Palestine in a comparative perspective

(2) Kei Saido (Research Student at Graduate School of Human and Environmental Studies, Kyoto University)
Palestinians in Israel and the Future Vision Documents: Searching for a way to binationalism

Commentator: Yoshihiro Yakushige (Adjunct Researcher at the Institute for Study of Humanities and Social Sciences, Doshisha University)

■Registration:  https://chukyo-u-ac-jp.zoom.us/meeting/register/tZUkdOCrqT8vE9HP7oaqHgmS5c3Kab3HtWoP

■Organized by
Kansai Society for Palestine Studies (http://kansai-palestinestudies.blogspot.com/)
Grants-in-Aid for Scientific Research (B) “Formation of New Networks and Liberation Conceptions among Palestinians in the Post-Oslo Era” (Principal Researcher: Taizo Imano)
主催:
関西パレスチナ研究会 (http://kansai-palestinestudies.blogspot.com/)
科研費基盤研究(B)「ポスト・オスロ合意期におけるパレスチナ人の新しいネットワークと解放構想の形成過程」 (研究代表者:今野泰三 課題番号:22H03831)

■Co-organized by Research Group on Palestine/Israel (https://plekn.aa-ken.jp/)
共催:パレスチナ/イスラエル研究会 (https://plekn.aa-ken.jp/)
 
■Contact:palestine.kansai@gmail.com

2022年度第2回研究会の報告

関西パレスチナ研究会の第2回研究会の様子を以下の通りご紹介します。


実施日時:2023年1月14日(土) 13:00~17:15

実施場所:大阪女学院大学/オンライン


【報告①】

報告者:役重善洋(同志社大学人文科学研究所嘱託研究員)

報告タイトル:シオニズムと聖書考古学-エルサレムおよびマサーフェルヤッタを訪ねて

報告者は、2022年11月のパレスチナ現地調査の成果に基づき、①Wahat al-Salam/Neve Shalom村の概要、②エルサレム旧市街における欧米・イスラエルの聖書考古学の歴史的変遷、③シルワーン地区でのIr David Foundationとイスラエル考古学局による発掘活動とAteret Cohanimによる入植活動の概要、及び、それらによるパレスチナ人住民の被害の状況、④クリスチャン・シオニストが創設したFriends of Zion Museum訪問の所感、⑤マサーフェルヤッタにおける強制移住問題の現状と訪問時の所感について報告と考察を行った。コメンテーターの今野からは、調査がイスラエルの植民地主義の諸相を包括的に捉えていることを評価するコメントと、パレスチナ人の抵抗の在り方に関する報告者の評価、及び、研究の今後の展望についての質問があった。出席者との質疑応答では、強制移住と家屋破壊の関係性についての質問や、日本聖公会のパレスチナ支援活動に関するコメント等があり、活発な議論がなされた。

【報告②】

報告者:金城美幸(立命館大学生存学研究所プロジェクト研究員)

報告タイトル:Kairos PalestineおよびGlobal Kairos for Justice国際会議に参加して

報告者は、2022年11月にパレスチナで開催された第13回カイロス会議(2022年11月18日~19日)に関する報告を行った。報告者が会議に参加した経緯や報告者自身の関心と会議の関係についての説明の後、カイロス会議開催の契機となった2009年カイロス・パレスチナ文書の特徴を考察した。カイロス会議は、カイロス・パレスチナ会議と正義のためのグローバル・カイロス会議の二部構成で、カイロス・パレスチナ文書の目的を実現していく活動の成果と課題を共有し、議論する場として位置づけられているとの説明があった。カイロス会議の課題として、グローバル・サウスからの参加者を増やすこと、若者や女性の参加や関与を増やすこと等があるとした。コメンテーターの今野からは、日本のキリスト教諸教会へのアプローチの展望について質問があった。出席者との質疑応答では、1948年パレスチナ人の類似した運動との関連性や、連帯の可能性と限界に関する質問などがあり、活発な議論がなされた。

(文責・今野泰三)

2022年度第2回研究会のご案内

関西パレスチナ研究会の2022年度第2回研究会を、下記のとおりオンライン(Zoom)と対面のハイブリッド形式で行います。

今回は、2022年11月に現地訪問を行った役重善洋氏が調査内容を踏まえた研究報告を行い、役重氏と共にベツレヘムで開催されたKairos Palestineの会議に参加した金城美幸氏が会議に関する報告を行います。

多くの皆様の参加をお待ちしております。

参加にあたっては、オンライン・対面いずれの場合も、研究会前日までに下記の申し込みフォームよりご登録をお願いいたします。(オンライン参加の方には開催前日にZoomリンクをお送りします
申し込みフォーム:https://forms.gle/qzoUKk6njWtQLKpT8

【関西パレスチナ研究会 2022年度第2回研究会】

■日時 2022年1月14日(土) 13:00~17:40

■場所 大阪女学院大学2階演習室

■プログラム(予定)

13:00~13:20 挨拶・自己紹介

13:20~14:20 
研究報告 役重善洋氏(同志社大学人文科学研究所嘱託研究員)
「シオニズムと聖書考古学~エルサレムおよびマサーフェルヤッタを訪ねて」

(休憩10分)

14:30~15:30
会議参加報告 金城美幸氏(立命館大学生存学研究センタープロジェクト研究員)
「Kairos PalestineおよびGlobal Kairos for Justice国際会議に参加して」

15:30~15:45  コメント 今野泰三氏(中京大学准教授)

15:45~16:45 質疑応答

16:45~17:15 関西パレスチナ研究会運営会議


■主催:関西パレスチナ研究会  palestine.kansai[at]gmail.com ([at]は@に変えてください)
   (研究会ブログ:http://kansai-palestinestudies.blogspot.jp/

■共催:
・科研費基盤研究(B)「ポスト・オスロ合意期におけるパレスチナ人の新しいネットワークと解放構想の形成過程」 (研究代表者:今野泰三 課題番号:22H03831)
・パレスチナ/イスラエル研究会 https://plekn.aa-ken.jp/

【報告】2022年度第1回研究会

実施日時:2022年5月28日(土) 14:00~17:00

実施場所:大阪女学院大学

報告タイトル:Social Fragmentation and Changes in Community Organization in the Post-Oslo Era

報告者:ジョシュア・リカード(熊本大学多言語文化総合教育センター特任准教授)

 報告者は、博士論文を元にした著書の内容に沿ったかたちで、①プレ・オスロ期、②ポスト・オスロ期、③2020年以降の三期に分けて、パレスチナの市民社会、とりわけ彼がフィールド調査を行ってきたナブルスにおけるコミュニティ組織の在り方について論じた。①の時期に、離散難民社会、さらに被占領地という異なる状況下で形成された多層的なパレスチナ・ナショナリズムが、②の時期の占領政策や新自由主義的な国際援助によって地理的・政治的・階級的・心理的に分断されていったプロセスについて、ナブルスの状況を参照しつつ、具体的に説明された。さらに、③の時期において見えてきたポジティブな変化についても最後に述べられた。既成の政治組織に失望・反発する若い世代のパレスチナ人たちが分断を乗り越えた連帯を志向し、新たなアイデンティティと抵抗のネットワークを形成しつつあること、また、自治政府の機能や信頼が低下しつつある中で地域コミュニティの動きが活性化していることが指摘された。質疑応答では、会場とオンライン双方からコメントや質問が出され、活発な議論がなされた。

(文責・役重善洋)

2022年度第1回研究会のご案内(5/28)

2022年度第1回研究会では、今年2月にご著書The Fragmentation of Palestine: Identity and Isolation since the Second Intifada. (Tauris Academic Studies)を刊行されたジョシュア・リカードさんに、パレスチナのヨルダン川西岸地区北部の都市ナーブルスを中心としたパレスチナ人コミュニティにおける社会的分断についてご報告いただきます。

著書紹介:https://www.bloomsbury.com/uk/fragmentation-of-palestine-9781784535872/?fbclid=IwAR3CrJd6EI3TC3XgNGvYwn3TOZmy0C9l0RerSxtJe_ybWvliaF6VRFigBTk

研究会はハイブリッド形式での開催ですが、事前予約制となっております。

対面・オンラインでの参加に関わらず、下記のgoogleフォームよりご登録をお願いいたします。

多くの皆様のご参加をお待ちしています。

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【関西パレスチナ研究会 2022年度第1回研究会】

■日時 2022年5月28日(土) 14:00~17:30

■形式 対面とオンライン(Zoom)のハイブリッド開催

■場所 大阪女学院大学2階演習室 (アクセス:http://www.wilmina.ac.jp/oj/?about=access

■プログラム(予定)

14:00~14:20 挨拶・自己紹介

14:20~16:20(報告60分+討論60分)

*英語にて行われます(通訳なし)

発表者:ジョシュア・リカード氏(Dr. Joshua Rickard)(熊本大学多言語文化総合教育センター特任准教授)

タイトル:Social Fragmentation and Changes in Community Organization in the Post-Oslo Era

発表要旨:This talk will focus on social fragmentation in Palestinian communities that has developed through various levels of isolation, and the ways that communities have adapted in response. Increased political and class divisions since the Oslo process, as well as frequently changing restrictions, have resulted in changes in how communities relate to each other, contributing to the extraordinarily personal experience of uncertainty in everyday life. With a focus especially on the Nablus region I will discuss changes in community formations and expressions of identity over time, and the possibility for a reformation of social organization which transcends traditional political discourse.

コメンテーター:髙橋宗瑠氏(大阪女学院大学教授)

(休憩10分)

16:30~17:30 関西パレスチナ研究会運営会議

■参加申し込み方法【事前予約制】

参加ご希望の方は、開催前日までに下記のフォームに記入の上、送信してください。(オンライン参加の方には開催前にZoomリンクをお送りします)

https://forms.gle/M2nm5XA6RciVoogm6

■主催:関西パレスチナ研究会  palestine.kansai[at]gmail.com ([at]は@に変えてください)

   (研究会ブログ:http://kansai-palestinestudies.blogspot.jp/

■共催:

・科研費基盤研究(B)「ポスト・オスロ合意期におけるパレスチナ人の新しいネットワークと解放構想の形成過程」 (研究代表者:今野泰三 課題番号:22H03831)

・パレスチナ/イスラエル研究会

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